キャンプ地ボジバサへ

5月21日(火)4時半起床、キャンプ地へ持って行く荷物をドアの外に出し、ニケタンで朝食を済ませ、8時、キャンプ地ボジバサ(標高3,850m)へ向かって出発する。徒歩組に見送られ先に出発した馬組ながら、乗馬所で待つこと1時間。なぜか馬が来ない。予約していた馬方たちがどうもストライキをしているらしい。結局ガンゴトリー寺院の馬方に交渉してなんとか馬を出してもらえることになり、予定より1時間半遅れでやっと出発。インドだからなんでも1時間待ちはザラ!誰もがすんなりと受け入れる。インドライフに慣れていった証拠かな。

しかし馬に乗るのは生まれて初めて。しかもかなり厳しい山道を3時間近く馬の背に揺られることになる。2頭に一人の馬方が付く。しかし私の乗った馬ちゃんはお利口なのか?一人でさっさと歩き始める。一歩間違えば谷底へ・・・のぎりぎり道も、なぜか谷寄りを歩き、谷寄りの草を食べ、かなり急流の川では身を屈めて水を飲み、その度に馬上の私は生きた心地がしなく、神様にひたすら祈りつつ、「I trust you !」とインド馬ちゃんだから英語か!と考え、心の中で叫び続ける。

馬上から見えるのは馬ちゃんの首筋?だけ。と、いうか他を眺め見る余裕一切なし。登りは「頑張れ!」と声を掛けつつ姿勢を下げて一緒に登る。しかし下りは後ろへ反らした私の態勢が整わない内に走り始める。なんで今走るの?馬方がお尻をピシッと打ったからか。一緒に弾もうと頑張る。いやぁ、もう必死。こんなことなら歩き組にしてもらえば良かったと、何度も何度も後悔する。

唯一の茶店があるチルバサにお昼前やっと到着する。歩き組の先頭はすでに通過した後だった。お弁当(梅干しのお握り2個、ボイルしたじゃが芋2個)を食べてチル(松の木)の下で休む。トイレは下った岩の陰で済ませる。高地ゆえに少し上っただけで息が切れる。内腿が筋肉痛!膝ががくがくする。まだ後どれだけ馬に乗らなくてはならないのか・・・歩き組のしんどさを思いつつも、我が身勝手で不安いっぱい。

日除けの帽子の上に工事現場?!のヘルメットを被り馬上に!その滑稽な姿を笑いながらカメラに収める欧米人あり。笑えばいい!!と開き直る。怖いものは何もない。お馬ちゃん以外は。(このヘルメットのお蔭で帰路落馬した仲間が頭を守られたんです!!)

遥か前方に真っ白に光り輝くバギラッティ峰が見えた時、涙が溢れて止まらなくなった。「あぁ、あなたはここにいたんですね。」ずっと探していた私の神様が目の前に現れた気がした。感動に震えるこころを抱え、馬上で見上げた神々しいまでのバギラッティ峰。溢れる涙を拭いながら、この感動は一生忘れないだろうと強く強く思った。

午後3時前、やっとキャンプ地ボジバサに到着した。高山病で気分が悪くなった仲間を支えながらキャンプ地へ降りる。私たちがこのキャンプ地で過ごす荷物や食材や、調理器具はすべてシェルパたちが背負って運んでくれた。50kg以上の荷物を背負い、14kmの道のりを彼らはサンダル履きで3時間ほどで登ってしまう。中国との国境近い村からこの時期出稼ぎにくるという。中には14歳の少年もいた。そんな労苦をしても運ばなければいけない物があったのか?実は物に縛られている自分に問いかけ続けた路でもあった。

テント生活が始まる。高地に体を慣らしながら、聖地ゴームクへの最終章へ備える。日中は20度以上に気温が上がり、強烈な紫外線が降り注ぐも、日が暮れると一気に冷え込む。寝袋に包まり、寝返りも出来ない状態で、星が降り注ぐ夜を耐える。もうすぐゴームクへ。・・・・続く。