春の気配

一気に気温が上がり、ほかほか太陽の日差しが春の訪れを感じさせる早春の日。週初めの日曜日から火曜日まで別府の姉の家で静養中の母に会いに行っていた。体調を壊し別府の病院に入院し、退院してからも中々体調が戻らずの状態だった。そんな母の状態をフェイスブックに載せたら、「出来るだけ時間作って会ってあげて!」「悔いのないように!」「行けるときは会いに行った方がいいよ!」と、仲間たちからたくさんのコメントが届いた。老いた親を持つ、あるいはすでに見送った仲間たち。週末片づけなくてはいけない仕事いっぱいだったけれど、そんな仲間たちの声に背中をいっぱい押され、日曜日、頑張って早起きして、高速バスに飛び乗り別府に向かった。

一か月ぶりに会った母は、一層小さくなって姉んちのソファに座っていた。「今日は廊下を10往復して疲れた」と母。「そうだね、木浦で一人で暮らすんなら、足を鍛えんとね。明日は歩いて公園にしだれ梅を観に行こうね。」と私。その日の夕食は猪汁。姉と二人で台所に立っていたら、母がやって来て大根を削ぎ、味付けまでしてくれた。「今夜、この一か月で初めて台所に立ったよ」後で姉から聞いて嬉しかった。猪汁は母の得意料理。母の味。まだまだ母は大丈夫!・・・なんだかそう思えて嬉しい夜だった。猪汁もとっても美味しかった。変わらない母の味だった。

翌日母と姉んちのすぐ近くにある南立石公園に歩いて行った。母の歩みはとてもゆっくりで、すぐ疲れてしまうから何度も休憩をした。日差しは暖かいけれど風はやはり冷たくて、母が寒くないかと気遣いながら、やっとお目当てのしだれ梅に到着した。「わー!!すごい!」と母と見とれる。母をベンチに座らせて、私はしだれ梅の枝の下に立って、その向こうに広がる青空を眺める。辺りに漂う清楚で気品ある梅の香を胸いっぱいに吸い込む。「お母さん!生きてるっていいね。また来年も一緒に春を迎えようね!」そう心の中で何度も願いながら。レッスンを終えて車で迎えに来てくれた姉と一緒に「信濃屋」に行って三人でランチをした。甘いもの大好きな母は、やせ馬小豆?を注文。姉と私はだんご汁。母に取り分けてあげながら、久しぶりに母娘三人のランチ。大好きなやせ馬に母はとっても嬉しそう。かって母が作ってくれたやせ馬やだんご汁の想い出話をしながら。「覚えとらんわ」と言いながら母はやせ馬を食べる。窓から差す陽射しはそんな全てを包み込んでくれているかのように、とっても優しかった。

翌日「トキハに行って買いたいものがある」という母と一緒に三人で別府トキハに行く。冬物最終バーゲンコーナーで、母は懸命にブラウスを探す。そんな姿がとにかく嬉しい。柄物のタートルネックシャツ?を購入。一回りして再びそのコーナーに行ったらまた違ったタートルネックシャツを買おうとした。さっきも買ったのにと言ったら「へぇ?何を買ったん?」と聞いてきた。さっき買ったものも忘れるんだ。ちょいと心配しつつ、でも着飾るこころあればいいかな・・・と思ったり。

買い物後私が博多行のバスに乗るにはまだ30分以上の時間があったけれど、母をその場所にずっととどめて置くには忍びなく、駐車場で母と別れた。姉の車の後部座席に小さくなって座って私に手を振る母の眼は涙で潤んでいた。「さようなら、お母さん!」何度も何度も心の中で叫びながら母を見送り、寂しい思い抱えたまま福岡へ戻るバスを待った。帰りのバスに乗ったら涙が溢れた。胸が張り裂けそうになるくらい寂しかった。
明日母は1か月ぶりに木浦の家に帰る。あの家で一人でまた暮らすことが出来るのか、とても不安ではあるが、母は母なりに今を歩き始めようとしている。私も・・・頑張らなくては!!別府在中、その他いっぱいの気づきや感動があった。それはまた次回に・・・!変わらずの一歩一歩。