ウッタルカシへ 帰路の旅 No 2

すっかりご無沙汰の「和日記」です。今日のレッスンでも、「先生、インド以後いろいろ忙しくてインド、すっかり飛んじゃったんではないですか」と、言われてしまった。はい、確かに・・・で、あのインド修行の旅は何処へ?「ここ、私の胸の奥に深くしっかりといますよ!」と、こころの中で答えた。「和日記」もガンゴトリーを発って、モンゴル村に立ち寄り、それからウッタルカシへ向かった日から、止まったままだった。
そのウッタルカシが、私が行ったインド北部一帯が信じられないような洪水の被害に見舞われている。今週初め、例年より早いモンスーンの影響による豪雨で、特にインド北部のウッタラカ州北部にある、私がまさに訪れたウッタルカシを中心とする山岳地域で、いたるところで河川の氾濫、土砂災害が発生して、道路や建物などに被害が及んでいるという。 亡くなった方、行方不明の方など、一説によると千人を超えるという。 また2万人以上の観光客やヒンドゥー教聖地への巡礼者が道路の寸断により立ち往生して、救援を待っているという。もちろんあの聖地ガンゴトリーへ続く路も崖崩れで道路が遮断されている。実は3年前の2010年9月21日にも村人150人が死亡する洪水があった。当時流されたという橋は3年たってもまだやっと一つ架けられた状態だった。


ウッタルカシ到着後の夕方、木村先生と一緒にラムジと面識のある10名ほどの仲間で、2010年後唯一架けられた橋を、かなりの時間をかけやっと渡り、かなり遠回りをし、ガンガ(正確にはバギラティ川)の上流にあるラムジのアシュラムを訪問した。私にとって4年振りの場所だった。ガンガのすぐ側に大きな岩をそのまま残し建てられた部屋でラムジに再会した。木村先生とラムジは、かってボーレ先生の下で共に学んだ門下生同志。互いの近況を語り合った後、ラムジから私たちへの祝福の言葉をいただき、ラムジの誘導でしばしの瞑想をした。静寂の中でガンガの流れる音がすぐそばで聞こえる。「ガンガは智慧の音を奏でながら流れている。その音が聖音「オーム」を唱えるその音のつなぎ目の静寂に聴こえる」ラムジの言葉の向こうにガンガの流れる音が、智慧の音が聴こえる。智慧の音・・・至福の時間だった。

そんな智慧の音を奏でていたガンガが、わずか1か月も満たない内に濁流となって村を襲ったなんて。わずか1ヵ月前、確かに見たシバ神の像が濁流に流されるさまをUチューブで眼にし、言葉を失った。あのラムジと過ごした聖なる場所は大丈夫か?同じくガンガの側にあったニケタンのアシュラムは?ヴィシュワナート寺院は?訪れた場所、出会った人たち、共有した空間、すべての今を思い、胸を痛める夜。

私たちの旅を支えて下さった「トラベル・ミトラ・ジャパン」の社長、大麻氏(「たいまし」ではなく「おおあさし」ですよ)によると、こういった尋常ではないインド北部の洪水は、実はダム建設に因る人災?だという。ウッタルカシにインド最大のダム、「デーリー・ダム」は40年以上の時間をかけて、2004年完成をした。40数か所の村が沈み、移住を強いられた村人は10万人に上る。以来毎年洪水に見舞われる。三年前は決壊を免れたダムは今回はついにその境を越えたのかもしれない。天災か人災か・・・・災害が起きる度に繰り返される言葉。犠牲になるのはいつもそんな繁栄の恩賞から取り残された人たち。

「先生、今インドじゃなくて良かったですね」と言われ、「そうですね。」といいつつ、再び考え込む。幸い?の我が身を素直に喜べない自分がいる。